第13章 死ぬ生物と死なない生物
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爬虫類の歯は老化しない
「いつか死ぬという事実に逆らって何になる。それは君の人生を苦しくするだけだ」
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749~1832)
老化
老化しない生物もいる
爬虫類は歯がなくならない
古い歯がとれても次から次へと新しい歯が生えてくる
爬虫類は同歯性の動物
数はたくさんあるがみな同じ形をしている
爬虫類は歯と歯が噛み合わない
獲物を捕まえるための歯
獲物を丸呑みにするにする
哺乳類は異歯性の動物
切歯、犬歯、臼歯
咀嚼するために噛み合うようになっている
爬虫類のように獲物を捕まえるための牙(犬歯)だけでなく、肉を噛み切る切歯やすりつぶす臼歯が加わった
このような歯によって食物を巧みに処理できるようになったことは、哺乳類が進化的に成功してきた理由の一つだろう
だが、複雑なものは何度も作るのが難しい
だから何回も生え変わることができない
基本はヒトのように乳歯から永久歯に1回だけ生え変わるタイプ
ネズミは歯が1度も生え替わらない
ゾウの歯は5回生え変わると言われるが、本当はヒトと同じように永久歯に1回生え変わるだけ
ゾウの長生き場は切歯が変化したもので、これは生え替わらずに一生伸び続ける
ゾウの口の中には歯が上下左右に1本ずつ、計4本の臼歯のみ
ゾウの乳歯は前部で12本あるが、成長する時期がずれているので、1度に4本ずつしか口の中に現れない
新しい乳歯ができると、古い乳歯は前に押し出されて抜け落ちる
永久歯も同じで全部で12本あり、4本ずつ成長して口の中で使われる
ゾウには合計で24本の臼歯があり、4本ずつ使われるので、5回生え変わるように見える
昔の哺乳類には、複雑な歯をもつものもいた
白亜紀(1億4500万年~6600万年前)末あるいは古第三紀(6600万年前~2300万年前)初期に生きていたテイウス科のトカゲの後ろの方の歯は臼歯のような形をしており、ちゃんと上下の歯が噛み合うようになっていた
その代わり、何度も生え変わるという能力はなくなっていたようだ
おそらく普通の哺乳類と同じように、乳歯が抜けたあとに生えてきた歯を一生使っていたらしい
複雑なものは何回も作れないというのは、哺乳類だけでなく爬虫類にも当てはまる一般的な規則のようだ
若いときに上手く噛むための代償として、年をとると歯がなくなってしまうわけだ
年をとってからもそこそこ上手く噛める歯より、たとえ年を取ると抜けてしまっても、若いときに非常に上手く噛める歯が、哺乳類では自然選択によって増えたのだろう
難しいことを考えるために老化する
受精卵から細胞分裂が始まり、20年ぐらい経つと、数兆個もの細胞からなる一人の人間に成長する
この数十兆個の細胞は260種類ぐらいに分類されるが、なかには随分変わった細胞もある
神経細胞
細胞体から樹状突起が出ている
いくつかはとても長く伸びていて軸索と呼ばれる
細胞は丸いものや楕円形のものが多いが、神経細胞は変な形をした特殊化した細胞
特殊化の代償として細胞分裂をする能力を失った
さらに複雑なものは脳
神経細胞の集合体だが、非常に複雑な構造をしている
一部の例外を覗いて脳の神経細胞は分裂しない
逆に言えば、分裂しない細胞で作られているからこそ、脳はここまで複雑な構造になれたのだろう
つまり、若いときに素晴らしいことを考えるために、年をとると認知能力が下がってしまう
自然選択による
単細胞生物は死なない
生殖細胞
無限に分裂する
もし生殖細胞の分裂回数が決まっていたら、私達の子孫は途中で途切れてしまう
基本的に命というものは、永遠に続くもの
神経細胞は変わり者で、生殖細胞が普通
細菌の一種である大腸菌は、細胞分裂をしながら生きている
40億年間も細胞分裂を続けてきた
環境が悪くなれば大腸菌も死ぬことはあるが、少なくとも永遠に生きられる可能性はあるのだ
多細胞生物
ヒトが死ぬのは多細胞生物だから
多細胞生物とは、細胞がたくさん集まった生物(群体)ではない
群体を作っているどの単細胞生物も、永遠に分裂を続けていく能力を持っている
多細胞生物は使い捨ての体細胞を持っている
分裂能力を気にせずに色々な形になれる
複雑なものは死ぬ運命
多くの人にとって、たとえ細胞がいくつか残っていても意識が消えてしまえば死んだも同然
意識は複雑な脳が生み出したものだから、それは1回限りのもの
脳という複雑なの構造自体が1回限りのもの
→第14章 肺は水中で進化した